音楽生成ベンチマークの方法論
対象範囲と背景
Artificial Analysisでは、通常サーバーレスAPIエンドポイントを通じて提供される音楽生成モデルをベンチマークしています。このページでは、Artificial AnalysisのMusic Arenaにおける人間の選好投票を通じてモデルの品質を測定する方法を説明します。
音楽生成機能については、次の2つのモダリティを扱います。
- Instrumental: ボーカルを含まない音楽を生成するモデル。
- Vocals: 歌唱または語りのボーカル要素を含む音楽を生成するモデル。
出力をできる限り比較しやすくするため、すべてのモデルとプロバイダーで生成する各トラックに共通のデフォルト設定を適用しています。設定の一覧は、以下の「デフォルトの生成設定」に記載しています。
品質Elo
各モデルのEloスコアは、Artificial AnalysisのMusic Arenaでのユーザー投票から算出した相対的な品質を示します。レーティングはBradley-Terry最尤推定法で計算し、読みやすいようEloに似た範囲へ再スケーリングしています。この方法は、Image ArenaとVideo Arenaでも使用しています。各レーティングには95%信頼区間も併記し、モデルへの投票が増えるほど区間は狭くなります。
アリーナでは、ユーザーは同じモダリティのトラック同士だけを比較します。Eloはモダリティごとに個別に示し、さらにジャンル別にも内訳を表示します。
アリーナ投票
品質Eloは、ブラインド方式で行う一対比較の人間による選好投票のみを基にしています。各比較では、同じプロンプトとモダリティから生成された2つのトラックをユーザーに提示します。ユーザーは両方を聴き、好ましい方を選択します。
- 試聴要件: ユーザーが各トラックを少なくとも10秒間聴いた後にのみ投票できます。これにより、第一印象ではなく音声出力全体を踏まえた選好を反映します。
- ブラインド方式: 投票が完了するまで、モデル名、ロゴ、その他の識別情報は表示されません。
音声の正規化
トラックをアリーナに投入する前に、すべてのトラックのラウドネスと配信形式を統一します。これにより、音量やファイル特性の違いではなく、音楽の品質が投票に反映されます。
- ラウドネス: 各トラックは、単一の静的ゲイン調整によって統合ラウドネスの目標値である-16 LUFS(ITU-R BS.1770)に近づけます。クリッピングを防ぐため、増幅時はトゥルーピークの上限を-1 dBTPとし、十分なヘッドルームがないトラックは目標値をわずかに下回ります。コンプレッション、リミッティング、EQは適用せず、各トラックのダイナミクスと音色のバランスを維持します。
- 配信形式: プロバイダーが返す形式にかかわらず、すべてのトラックを44.1 kHz、320 kbpsのMP3に再エンコードし、プロバイダーのメタデータと埋め込みアートワークを削除します。元のチャンネル構成(モノラルまたはステレオ)は維持します。
リーダーボード
モダリティごとに、グローバルリーダーボードとパーソナルリーダーボードを公開しています。
- グローバルリーダーボード: ユーザーから寄せられた有効な投票をすべて集計します。モデルは、最低投票数に達すると掲載されます。
- パーソナルリーダーボード: 1人のユーザー自身の投票から作成されるランキングです。最低投票数に達すると利用可能になり、信頼できるランキングに必要な投票数に達するまでは、信頼度が低いことを示す警告が表示されます。
どちらのリーダーボードも、ジャンルでさらに絞り込めます。
プロンプトとジャンル
プロンプトには、さまざまな音楽スタイルを網羅した厳選済みで再現可能なセットを使用します。さらに、ユーザーが送信したプロンプト(25~200文字)を審査したうえで、ローテーションに追加します。
各プロンプトには、ポップ、ヒップホップ/ラップ、エレクトロニック(EDM)、クラシック/オーケストラ、ジャズ&ブルースなど、1つのジャンルを付与します。同じBradley-Terry法を用いて、モダリティごとの総合Eloランキングに加え、ジャンル別Eloランキングも計算します。そのジャンルで有意な結果を得るのに十分な投票が集まると表示します。
デフォルトの生成設定
特に記載がない限り、これらの設定はInstrumentalとVocalsの両方のベンチマークに適用されます。
| 設定 | 値 |
|---|---|
| プロンプトあたりのトラック数 | 1 |
| 長さ | 約3分(または、対応している長さのうち最も近いもの。モデルの出力時間が固定されている場合は、その長さを使用) |
| 音声形式 | 設定可能な場合はMP3。それ以外はプロバイダーのデフォルト |
| サンプリングレート | 設定可能な場合は44.1 kHz。それ以外はプロバイダーのデフォルト |
| シード | プロバイダーがシードパラメーターを提供している場合は42 |
| 歌詞 | モデルがプロンプトから生成(Vocals)。Instrumentalには適用されません |
| ボーカル | Instrumentalではオフ、Vocalsではオン |
音楽モデルが提供するパラメーターは大きく異なります。プロバイダーがデフォルト設定に対応していない場合は、対応している最も近い値またはプロバイダーのデフォルトを使用します。Music Arenaで使用するすべての生成において、モデルごとの設定は一定に保ちます。
Instrumental
Instrumentalモデルは、ボーカルを含まない音楽を生成します。Instrumentalフラグや、ボーカルを抑制するスタイルおよびネガティブプロンプトの制御など、エンドポイントがインストゥルメンタル出力に対応している場合にのみ、モデルをInstrumentalモダリティでベンチマークします。インストゥルメンタル生成とボーカル生成を分ける方法がないエンドポイントの場合は、Vocalsモダリティのみでモデルをベンチマークします。
Vocals
プロンプトを受け取り、歌詞とボーカルをモデル自体で生成できる場合にのみ、このモダリティでベンチマークします。歌詞は提供しないため、このベンチマークには各モデルのエンドツーエンドの楽曲制作能力が反映されます。
モデルとプロバイダーの掲載基準
当社は、人気があり高性能な音楽生成モデルを分析・比較し、ユーザーの選択に役立てることを目指しています。そのため、業界での重要性と競争力を検証し、新しいモデルやプロバイダーの掲載可否を評価します。基準は継続的に改善しており、ご意見やご提案を歓迎します。モデルやプロバイダーを提案するには、お問い合わせページからご連絡ください。
独立性に関する声明
ベンチマークは、厳格な独立性と客観性をもって実施しています。Artificial Analysisへの掲載や好意的な結果の見返りとして、プロバイダーから報酬を受け取ることはありません。